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[ T’act 12号掲載 ]
2021年の賃貸住宅市場動向について

2年近く続いたコロナ禍もやや落ち着きを見せています。
この間、テレワークの拡大や外出・レジャーの自粛など、暮らしには大きな影響があり、
賃貸住宅市場にも変化がありました。最新のデータから2021年の動向をご紹介します。

  • 担当者プロフィール

    河野 真太郎
    Kono Shintaro

    東急住宅リース株式会社
    ソリューション事業本部 営業推進部
    データコンサルティンググループ

  • 東京都の人口増減は?

    東京都の人口は図1の通り、初の緊急事態宣言が発出された2020年4月以降、他県から転入してくる人数より他県へ転出する人数が上回る転出超過の状態が続いています。例年、新年度が始まる前の3月は大幅な転入超過となります。コロナ禍とは言え、2021年3月は約28千人の転入超過となりましたが2020年3月の40千人の転入超過と比較すると約30%もマイナスとなりました。新型コロナウイルスの影響が大きいことがうかがえます。

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  • エリアによる差は?

    では、住宅需要に直接影響を与える世帯数の増減はどうでしょうか。エリアによる違いを探るために東京23区の区別で見ていきましょう。表1は各年1月1日時点における世帯数の前年増減数です。新型コロナウイルス流行前の2020年以前は毎年すべての区で前年差プラスだったのに対して、新型コロナウイルス流行後の2021年は「港区、新宿区、文京区、中野区、杉並区、豊島区、荒川区」が前年差マイナスに転じました。これは住宅需要が減少したと捉えることができます。

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  • 部屋タイプによる差は?

    次に部屋タイプ別の稼働率を見ていきます。図2は「シングル、DINKS、ファミリー」の3タイプにわけて稼働率の違いを比べたグラフです。新型コロナウイルス流行前はどの部屋タイプも高稼働率となっていましたが、2020年4月くらいを境に部屋タイプによる違いが見られ始めました。コロナ禍においては、ファミリータイプがもっとも好調で、次いでDINKSとなっています。シングルタイプは他の2タイプと比べて不調と言えそうです。
    図3は成約物件の平均空室日数を2019年を基準として年別で比較したグラフです。コロナ禍の2021年は2019年対比でシングルタイプが48ポイント、DINKSタイプが17ポイント、ファミリータイプが5ポイントと、それぞれ長期化しています。部屋タイプ別の新型コロナウイルスの影響は、ファミリータイプがもっとも軽微と言えそうです。実際はシングルタイプについてもコロナ禍以前はファミリータイプより短期傾向にありましたので過度に懸念することはなさそうです。
    最後に坪単価を見てみましょう。図4は成約物件の平均坪単価を2019年を基準として年別で比較したグラフです。すべての部屋タイプでコロナ禍前の水準と同等か、それ以上の単価帯となっていることからも、新型コロナウイルスの悪影響はほとんど見られないと言っていいでしょう。

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まとめ

一般的に不動産産業のなかでも賃貸住宅は不況の影響を受けにくいと言われていますが、新型コロナウイルスの流行による人の動きの停滞という社会全体の変化によって少なからず影響は受けています。
新型コロナウイルスが収束に向かい、人の動きもコロナ禍以前と同様になれば、稼働率や空室日数も改善していくものと期待しています。

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