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[ T’act 14号掲載 ]
2022年の賃貸住宅市場動向について

都市部のオフィス需要の低下が続いている一方で、
居住用不動産の募集賃料・稼働率の状況は、比較的堅調です。
この傾向は引き続き維持されるのか?
賃貸住宅市場の現況や将来予測、
今後の不動産投資で注目しておきたいポイントなどをご紹介します。

  • 担当者プロフィール

    河野 真太郎
    Kono Shintaro

    東急住宅リース株式会社
    ソリューション事業本部 営業推進部
    データコンサルティンググループ

  • 賃貸マンションは、有望な投資先として市場が認識

    東京都の賃貸マンションの着工戸数は、コロナ禍以降も増加傾向が続いています。
    景気の先行きが不透明になったことで、オフィスやホテルなどの他アセットと比較すると賃貸マンションは安定した収益を期待できるので、一般事業会社の遊休地の活用による開発や、投資ファンドが投資先として賃貸マンションを取得しています。とくに投資ファンドは積極的に投資しており、デベロッパーがファンド向けに賃貸マンションを開発しています。このため着工戸数の増加が続いていると考えられます。
    東京都の人口は、他県からの流入がコロナ禍で減少傾向となっておりますが、それでも着工戸数が増加傾向にあるのは、他アセットと比較して賃貸マンションは有望な投資先として市場から認識されているためでしょう。

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  • ファミリータイプは、安定した稼働率が継続

    当社管理物件の稼働率は、新型コロナウイルスの流行以降、ファミリータイプが好調です。その理由としてまず挙げられるのが、「マーケットに供給される物件数が少ない」ことです。最近のトレンドを見ても、2022年1~9月に市場に供給された新築の賃貸マンションのうちファミリータイプはわずか10%となっています。
    2つ目の理由として「分譲マンションの価格の高騰」が考えられます。“購入を様子見”という方たちを、うまく取り込めているのかもしれません。
    供給数が少なく、需要も高いファミリータイプの賃貸マンションは、成約条件も良好です。新築物件においてはシングルタイプより高い坪単価で推移しており、リースアップまでの期間も短くなっています。今後、供給戸数が増えたとしても、しばらくは成約条件への悪影響はなさそうです。

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  • 同程度の専有面積ならば、部屋数の多い間取りの方が人気に

    ファミリータイプが好調な背景にはもうひとつ、「コロナ禍でテレワークが増えたことにより、居室と仕事部屋を分けたいというニーズが高まり、部屋数が多い間取りが好まれる」ということがあります。
    最近のトレンドとして、同程度の専有面積帯の物件の場合、部屋数が多い間取りのほうがリースアップまでの期間が短く、かつ坪単価が高いなど成約条件がよい傾向にあります。例えば、35㎡以下の1Kと1LDKの成約条件の違いを見てみると、リースアップまでの期間は、1LDKの場合、1Kに比べ約0.8か月短い一方で成約坪単価は1.0千円高くなっています。2LDKなどでも同様の傾向が見られます。
    また、新築で新規供給される1LDKや2LDKを例にあげると、年々、専有面積が小さくなっています。これは首都圏の賃料が高騰し続けていることが要因のひとつとして考えられます。一般的な世帯では、毎月の収入から家賃に支出できる額に上限がある一方で部屋数の多い間取りに住みたいというニーズは増加傾向にあります。単純に賃料を下げたのでは賃料収入が減少することになります。賃料収入を確保しつつ、入居者のニーズに応えるためには、①賃料の上昇をある程度抑える。②前述の①を実現させるため専有面積を小さくする。これらにより、坪単価は高水準を維持でき、一棟全体の賃料収入を安定させることにつながります。

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専有面積がコンパクトな物件や、環境配慮型の物件に増加の兆し

昨今の地価や建材価格の上昇は賃料上昇要因になるものの、現時点で十分家賃が高い状態が続いている東京都内の賃貸マンションは、さらなる大幅な賃料上昇は期待できません。ただし、坪単価はいまだ上昇の余地があります。部屋数の多い間取りのほうが需要は高く、坪単価などの成約条件も良好なため、今後着工になる物件は、これまでに比べ専有面積がコンパクトな物件が増加することが予想されます。
また、環境配慮やSDGsへの意識の高まりにより、オーナーより賃貸住宅におけるサステナビリティ活動について、お問い合わせいただくケースが増えております。当社では、ZEH等の省エネ住宅建築や、設備更新による省エネ省資源化の提案、アフターコロナ時代を見据えた新しい働き⽅・ライフスタイルに対応した間取り・共⽤部等の提案に加え、新たな付加価値サービスの提案等、具体的なサステナビリティ活動項目を設定し、環境に配慮した様々な活動を実施しております。

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