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[ T’act 15号掲載 ]
2023(令和5)年度 税制改正に伴う
贈与税・相続税の重要な変更点

2022(令和4)年12月16日に、
2023(令和5)年度税制大綱が発表されました。
今年度の税制改正では、
賃貸住宅のオーナーにとって見逃せない改正点があります。
贈与税と相続税の一体化の観点から、ポイントをご紹介します。

相続税・贈与税に対する改正4つのポイント

今年度の税制改正における相続税・贈与税に関するポイントは、右記の通り大きく4つが挙げられます。
このうち①②については、2021(令和3)年度の税制改正大綱において、「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」を行うとの記載がされていたことで一気に注目を浴び、いつ改正されるのか注目されていました。その後、2022(令和4)年度においては継続審議となったものの、ついに2023(令和5)年度で改正となった経緯があります。
一方、③については、適用期間が2023(令和5)年4月~2023(令和8)年3月と3年延長、④については2023(令和5)年4月~2025(令和7)年3月まで2年の延長となります。
また、今回の税制改正大綱において注目すべきは、マンションの相続税評価について『市場価格との乖離の実態を踏まえ、適正化を検討する』という内容が盛り込まれた点です。 2022年4月19日の最高裁判決にて、財産評価基本通達による不動産評価が否認されたことで、いよいよ本格的に動き出すことになりました。

  • 相続税・贈与税に対する改正4つのポイント
  • 相続税・贈与税に対する改正4つのポイント

生前贈与の持ち戻し期間は「3年」から「7年」に。相続時精算課税の控除も変更

相続開始前に贈与があった場合の加算期間の見直しについては、相続税の対象となる暦年贈与の期間が3年間だったものが、4年延長となり7年間となります。また、延長となった4年間に実行した贈与のうち100万円部分については加算の対象外となります。こちらは2024(令和6)年1月1日以降の贈与について7年加算の対象となります。
相続時精算課税制度の見直しについては、現行の2500万円の控除額とは別に、基礎控除110万円を控除できることになります。なお、相続財産に加算する贈与金額には、当該基礎控除額は対象となりません。こちらは2024(令和6)年1月1日以後の贈与により取得する財産に適用となります。
また、贈与した日から相続税の申告書の提出期限までの間に、災害によって贈与を受けた財産に一定の被害を受けた場合には、被害を受けた部分に相当する額を控除した残額を、相続時に加算する金額とすることになります。こちらも2024(令和6)年1月1日以後に発生した災害により被害を受ける場合に適用となります。

生前贈与の持ち戻し期間は「3年」から「7年」に。相続時精算課税の控除も変更

教育資金&結婚・子育て資金の一括贈与制度はそれぞれ延長。ただし、贈与税課税は強化へ

教育資金の一括贈与については、贈与者が死亡した際の相続税の課税価格が5億円を超える場合は、受贈者が23歳未満であっても、その死亡の日における残高を相続等により取得したものとみなすこととなります。また、受贈者が30歳に達した場合における贈与税課税における税率は、特例税率(直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与に対して適用される税率)ではなく、一般税率となります。
結婚・子育て資金の一括贈与についても同様です。受贈者が50歳に達した場合における贈与税課税における税率は一般税率となります。

贈与するなら今年が適期。検討が続くマンションの相続税評価改正も注視を

今回の改正に対して考えられる対策としては、まず2023(令和5)年中に贈与を行うことです。今年中であれば7年ではなく3年加算の対象となるからです。また、これから贈与を検討するようであれば、少しでも若いうちに贈与を開始するのが良い手段と言えるでしょう。併せて、相続で財産を取得しない相続人や、相続人でない孫や子の配偶者は加算の対象外となるため、加算の対象外となる方へ贈与を行うというのも有効な手段となります。
相続時精算課税制度の見直しについては、相続財産に加算されない基礎控除額が新たにできたことを活用できます。仮に贈与者がご高齢だとしても、相続時精算課税を利用することで節税につながることになります。
なお、冒頭にも触れた通り、今後マンションの相続税評価についての改正が見込まれております。過去の通達改正から考えると、いつ通達の改正が行われてもおかしくない状況です。最短で本年7月公表、2024(令和6)年1月から改正ということも十分ありえます。本年に通達改正となった場合は上記記載の通り、本年中の贈与であれば3年加算の対象となることから、やはり本年中に贈与してしまうのが良いかもしれません。

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